生活保護受給者はお金を借りることができる?

生活保護受給中にお金を借りてはいけないという規則や法律はありません。
ですので、理論上は生活保護受給が消費者金融などからお金を借りることも可能ということになります。ただし、様々な理由から「実際は難しい」というのが現実です。
でもそれでは本当にお金が必要な時に大変困ってしまうことになりますよね。
生活保護受給中にお金を借りる手立てが全くないということはありませんのでご紹介します。
本記事でご紹介するのはきちんとした正当な手段なのに、利息もつかないというお金を借りるための正攻法です。
どんなにお金に困っていて「どん底だ・・・」と感じていても、絶対にヤミ金や怪しい貸金業者からお金を借りることだけは避けてくださいね!
生活保護とカードローン
まずは生活保護受給中にカードローンでお金を借りることは可能なのか?というところから見ていきましょう。
生活保護受給者でもカードローンでお金を借りられる?
冒頭でもお伝えしましたが、生活保護受給中にお金を借りてはいけないという決まりごとはありません。
しかし、消費者金融や銀行カードローンで借りるのは非常に困難でしょう。
なぜなら、カードローンでお金を借りるには審査に通過しないといけないのですが、生活保護受給中であることがわかると審査通過の可能性が非常に低くなるからです。
生活保護受給者がカードローン審査に通過できない理由
カードローンの申し込みには必ず「安定した収入」が必要になるのですが、生活保護として支給される金額は安定収入としてみなされません。
この時点でまず不利になるのですが、他の理由もあります。
銀行カードローンは審査が厳しい
カードローン業者を大きく分けると、消費者金融と銀行カードローンになるのですが、より審査が慎重に行われるのは銀行カードローンになります。
安定収入がない生活保護受給者が審査に通る可能性は限りなく低いでしょう。
消費者金融も年収の3分の1までしかお金を貸すことができない
消費者金融をはじめとした貸金業者は、「貸金業法」の「総量規制」という規則に基づいた融資を行なっています。
総量規制は「個人が貸金業者から借りられる金額は年収の3分の1」というルールになります。
生活保護は年収としては扱われないので収入源が生活保護のみという人は年収が0円ということになり、消費者金融も総量規制の観点からお金を貸せないということになってしまいます。
仕事をしていたらお金を借りられる?
生活保護受給中でも仕事をしている人もいます。
例えば毎月5万円の収入がある場合は、総量規制としては年収の3分の1に該当する20万円までなら貸すことができます。
このケースでは、理論上は生活保護受給者でもカードローン審査に通過する可能性はあります。
しかしオススメはしませんし実際は厳しいでしょう。
消費者金融の審査では、年収の高さよりも安定した収入があるかどうかを審査されるので、「年収が低いことが不安だったけど審査に通った」という人はいます。
しかし、それでも年収が100万円未満というのは安定した返済能力があると考えるには非常に厳しい金額になるでしょう。
「生活保護を受給できるというくらいの年収」は、余裕を持って審査に通る年収とは言えないのです。
生活保護と伝えなければ審査に通るって聞いたけど?
「信用情報を調べれば生活保護を受給していることがバレる」と言われることもありますが、これは間違いです。
信用情報機関には生活保護を受けているかどうかは記載されていないので、自分から申告しなければカードローン業者に生活保護受給者であることがわかることはありません。
しかし嘘はダメですよ!
嘘は必ずバレる!
生活保護を受給していることがバレないようにカードローン審査に申し込むには以下のような嘘をつかなければいけません。
・仕事をしていないのにしていることにする
・年収を多く記入する
など
でも、これらの嘘は確実にバレるので意味がないばかりか、非常にリスクが高くなります。
生活保護を受給していることは聞かれなければ言う必要はありませんし、審査で「あなたは生活保護受給者ですか?」と聞かれることはありません。
それでも嘘はバレることになるんです。
職業のウソはなぜバレるの?
カードローン審査では、申告した勤務先に実際に勤めていることを確認するために「在籍確認」が行われます。
在籍確認ではカードローン審査の担当者が勤務先電話番号に実際に電話をかけて「○○(あなた)さんはいらっしゃいますか?」と尋ねます。
本人が電話に出る、または出られなくても本当に勤めていることが確認できれば在籍確認に通過できるわけです。
もちろん、ウソの電話番号を書いてしまったらこの電話に対応できないので審査通過は無理です。
では、自営業として自宅で働いていることにしたらどうでしょうか。
自宅兼事務所のような家と勤務先が一緒で、仕事用の固定電話もひいていないような自営業の場合は在籍確認の電話がかかってこないケースもあります。
しかし、そもそも自営業や個人事業主は、お勤めをしている人よりもカードローン審査が厳しく行われる傾向にあります。
そのため、希望額に関わらず確定申告書などの収入証明書の提出を求められることがあります。
必要書類を提出できないと審査に通ることはありません。
年収のウソはなぜバレるの?
申し込み内容に何も問題がない場合、収入証明書の提出を求められる主なケースは以下の2通りしかありません。
2. 借り入れ希望額と他社からすでに借りている金額の合計が100万円を超える場合
どこからもお金を借りていない人が50万円未満の借り入れを希望しているのであれば、収入証明書の提出を求められることはないということになります。
しかし、生活保護受給者が嘘をついて申し込みをすると、必ずどこかがちぐはぐになってしまいます。
仕事をしていないのに年収や職業面で嘘をつくということは複数の項目をごまかすことになります。
そうなると必ずどこかにおかしな部分が出てくるので、本来は収入証明書が不要なケースでも提出を求められることになり、嘘が発覚してしまいます。
本人確認書類から嘘がわかることもある
過去に各種ローンやクレジットカード審査に申し込みをした人で、本人確認書類として運転免許証を提出した場合は信用情報機関から嘘がバレることがあります。
運転免許証番号は信用情報機関に記録されているので、ここに記録されている過去の職業や年収などと、今回嘘をついて申し込みをした内容が著しく異なると怪しいということになり審査がより慎重に行われることになるのです。
また、嘘をついて正社員として勤めていることにしたけど、健康保険証が国民健康保険だった場合なども怪しまれてしまうことになります。
虚偽の申し込みでカードローンを利用するのは危険
生活保護だけではどうしてもお金が足りないからといって、カードローン業者に虚偽の申告をするのは非常に危険です。
虚偽の申告をしてお金を借りて、あとから発覚してしまった場合、以下のようなペナルティが考えられます。
・一括返済の要求
・詐欺罪が成立してしまう(10年以下の懲役)
一括返済を迫られてしまうだけでも非常にきついものですが、強制解除も怖いんですよ。
なぜなら、信用情報機関に最長5年間記録されてしまい、この間はカードローンばかりかクレジットカードの審査にも通らないから。
生活保護受給中にはあまり重要ではないかもしれませんが、働けるようになってからはクレジットカードがないのは不便です。
嘘をついてまでカードローン審査を受けることはデメリット・リスクばかりを背負うことになります。相手を騙すような形でお金を借りても良いことはひとつもないということはぜひ覚えておきましょう。
役所に内緒でカードローンを利用するのはリスクが高い
本当にオススメしないのですが、生活保護をもらっていることを隠してカードローン審査を受けた結果、審査に通ってしまったという例も稀にあります。
また、生活保護受給前にカードローン会社と契約をしたことで、今でもお金を借りられる状態ということもあると思います。
何年も前に契約したものであれば本当に忘れていることもありますし、自分から解約しなければ借り入れができる状態になっているので、この場合は審査不要で借りられてしまいます。
しかし、生活保護を受給しながらカードローンでお金を借りてしまうと、最悪の場合、生活保護を打ち切られることもあるんですよ。
ケースワーカーにバレてしまう
生活保護受給中はケースワーカーの家庭訪問を不定期に受けることになります。その際に生活に変化があると、ケースワーカーにはすぐにわかってしまうのだそうです。
カードローンの契約書などが実際に見られてしまったわけでもないのに、お金を借りていることがなぜかバレてしまったということが実際にあります。
通帳からカードローン利用が発覚することがある
生活保護の申請をする際には、所持している通帳のコピーを提出する必要があります。
もし、これまでにカードローンの振込キャッシングを利用していたり、インターネットバンキングで借入・返済していたら、その履歴から確認されることになります。
また、生活保護受給中も役所が生活保護受給者の預金調査を行うことは可能です。
ですので振込キャッシングの履歴から生活保護受給中にカードローンでお金を借りたことがわかることもあり、発覚したら不正受給とみなされることもあります。
生活保護の返還の義務が発生することもある
たとえばカードローンで15万円の借り入れに成功したとします。一時的にも手元に現金が入るのは助かりますが、この時点で「15万円の資産が増えた」と判断されることもあります。
一定の資産がある場合は生活保護を受給できませんし、受給中に資産と判断されてしまったら生活保護費の返還を要求されることになります。
いずれ返済が必要なお金が資産になるのはおかしいと思われるかもしれませんが、借金であれお金を手にした時点でそれは原則収入になります。
15万円を借りたのであれば15万円の収入が発生したと判断されてもおかしくはないので、同じく生活保護の支給が停止になったり減額されてしまう可能性は否定できません。
最悪の場合、生活保護が差し止められてしまう
「これは借りたお金だけど、生活のための貯蓄に回すお金だから!」と、貯蓄を理由に借り入れを認めてもらいたいと考える人もいます。
そもそも、生活保護受給中に貯蓄が可能かどうかという点については、条件に当てはまれば貯蓄も認められています。
<参考>生活保護受給中に貯蓄が可能か?について
将来の自立のために充てられる目的で形成された貯蓄については、認められると考えられますが、資産性のあるもの(自家用自動車、貴金属、株、有価証券など)の購入目的であったり、観光その他の海外旅行などの目的であれば、容認はできないと考えられますので、貯蓄が自立以外の目的であれば、収入として認定することになります。
しかし、カードローンで借りたお金には、利息が発生することになるので貯蓄とするのはかなり厳しい言い訳です。
また、お金を借りるということは、同時に返済の義務が生じるということになります。
生活保護費は最低限度の生活を保障するという観点から支給されるものなので、生活保護費を借金の返済に充てることはできません。
一例ですが、厚生労働省は生活保護費から住宅ローンの返済は原則認められないとしています。
<参考>住宅ローンがあっても生活保護を受給できる?
住宅ローンがあるために保護を受給できないことはありません。ただし、保護費から住宅
ローンを返済することは、最低限度の生活を保障する生活保護制度の趣旨からは、原則として認められません。
役所に虚偽の申告をしたり、「これくらいは大丈夫だろう」と自分の勝手な物差しで判断してしまうと、生活保護の不正受給に該当してしまうことがあります。
現在、生活保護の不正受給には社会が厳しい目を向けているのはみんなが知っているとおりです。
目先の現金につられてしまい、生活保護の差し止めという最悪の状況にならないためにも、嘘をついてお金を借りることはやめておきましょう。
生活保護受給者でも利用できる「生活福祉資金貸付制度」
生活福祉資金貸付制度とは高齢者世帯・障害者世帯、それから低所得者世帯の生活を支えるための貸付制度です。
カードローンのようにATMからサクッとお金を借りられるというような気軽さはありませんが、生活保護受給者も申し込み可能ですし、公的な貸付制度になりますので非常に安全です。
生活福祉資金貸付制度の窓口はどこ?
生活福祉資金貸付制度の詳細はお住いの地域で変わりますが、受付窓口は「市区町村社会福祉協議会」になります。
相談先が不明な場合は、都道府県の社会福祉協議会に問い合わせをしてみてください。
<参考>:都道府県・指定都市社会福祉協議会のホームページ(リンク集)【全国社会福祉協議会】
生活保護受給者の貸付条件は?
生活福祉資金貸付制度の貸付対象には、低所得者世帯・障害者世帯・高齢者世帯という3つの区分があるのですが、低所得者世帯の場合、生活保護を受けているかどうかという区別ではなく、「資金の貸付けにあわせて必要な支援を受けることにより独立自活できると認められる世帯であって、必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯」を対象にしています。
目安としては「市町村民税非課税程度の世帯であること」となっていますので、生活保護を受けている人は該当しているはずです。
生活福祉資金貸付制度の貸付の種類
生活福祉資金貸付制度として借りられるお金は大きく4つの項目があり、その中からさらに細かく分かれています。
該当する項目に申し込みをして審査を受けることになるわけです。
●生活福祉資金貸付制度の貸付の種類
総合支援資金 | 生活支援費 |
住宅入居費 | |
一時生活再建費 | |
福祉資金 | 福祉費 |
緊急小口資金 | |
教育支援資金 | 教育支援費 |
就学支度費 | |
不動産担保型生活資金 | 不動産担保型生活資金 |
要保護世帯向け不動産担保型生活資金 |
生活福祉資金貸付制度の限度額・利息・返済方法・連帯保証人など
貸付の種類によって詳細は異なりますが、ここでは「緊急小口資金」を例に解説します。
緊急小口資金は「緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に貸し付ける少額の費用」として貸付を行なっているものです。
緊急時を対象としているだけあって他の貸付よりも比較的短期間で借り入れが可能で、早い場合は申し込みから5日程度で借りられることもあります。
緊急小口資金の限度額
1回の申し込みで、10万円以内が限度となります。
緊急小口資金の利息
緊急小口資金は金利のない無利子の貸し付けになります。返済は元金のみで良いので、非常に安全な借り入れができます。
大手消費者金融から10万円借りた場合、非常に多くのケースで金利は18.0%になります。
これは大手消費者金融の上限金利が18.0%に設定されることが多く、限度額が10万円の場合はまず間違いなく上限金利が適用されるためです。
例えば、10万円を金利18.0%で6ヶ月間借りた場合の利息は9,024円になります。
この利息を丸ごと節約できることになるのは緊急小口資金の大きなメリットです。
緊急小口資金の返済方法
緊急小口資金には返済を猶予してもらえる据置期間があります。
融資を受けた日から2ヶ月間が据置期間となるので、返済はそれ以降から開始しても構いません。
返済期限は据置期間経過後から12ヶ月以内になります。
最長でも10万円を1年以内に返済しないといけないということになりますね。
緊急小口資金の連帯保証人
保証人も連帯保証人も不要です。
周囲に頭を下げてお願いしなくても良いところも、精神的に大きなメリットになるのではないでしょうか。
緊急小口資金の審査
審査に関しては運転免許証1枚あれば申し込み可能なカードローンと比べるとハードルは上がりますし、必要書類も非常に複雑になります。
公的な支援でかつ無利息ということで、申請した人みんなが簡単に借り入れできるわけではありません。
借入申込書 | 社会福祉協議会の窓口にあります |
住民票の写し | 発行から3ヶ月以内のものが世帯全員分必要です |
本人確認書類 | 顔写真付きのもの(運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなど) |
健康保険証 | 切り替え中などで持っていない場合はその旨を相談してください |
申込者の世帯の収入証明書 | 源泉徴収票、確定申告書など 生計中心者および配偶者、世帯の生計維持に寄与する人分が必要 |
借用書 | 社会福祉協議会の窓口にあります |
借入申込者の実印とその印鑑登録証明書 | 印鑑登録証明書は発行から3ヶ月以内のもの |
預金口座振替依頼書 | 社会福祉協議会の窓口にあります 通帳と銀行届印も合わせて必要です |
借入理由による確認書類 | 借入の理由によって必要書類が異なりますので、最寄りの窓口で確認してください |
※必要書類の一例です。申し込みの際には最寄りの市区町村社会福祉協議会窓口で確認してください。
これらの書類を揃えて申し込みをして、審査に通過したら生活保護受給者の方でもお金を借りられることになります。
簡単ではありませんが、うまくいけば1週間程度で借りられて利息もつかないというメリットを考えると、困っている時には前向きに検討してみるべきでしょう。
生活保護を受給しているからこそ正当な方法でお金を借りよう
生活保護を受給していることでお金を借りられない人に対して「うちなら貸せますよ!」と言ってくる貸金業者もあります。
しかし、正当な貸金業者であればこのようなことは絶対に行いません。なぜなら、貸金業は慈善事業ではないので、働くことができない人や返済能力に不安がある人にお金を貸すことがないからです。
悪質な貸金業者やヤミ金は、「どんな手を使ってでも返済してもらう」という考え方なので、生活保護受給者だろうが関係なくお金を貸します。
こういったところからお金を借りると身を滅ぼしてしまいますので、絶対に闇金でお金を借りてはいけません。
生活保護を受給していても安全にお金を借りる方法はあります。
嘘をついて心を痛めながらカードローン審査を受ける前に、生活保護受給者の方は、まず公的な手段から借入を検討するようにしてみてくださいね。
<参考>:厚生労働省 生活福祉資金貸付制度
